出向していた障害のある方の訓練校(国立職リハ)で修了式に当時の所長が祝辞で紹介していた句です。江戸時代、瓢水の評判を聞いて訪ねた一人の禅僧。

 そこで目にしたのは、「風邪気味で町まで薬を買いに行っている」という置き手紙。「風邪を引いたぐらいで薬を求めにいくなんど、悟りを開いたと言われる瓢水だがこの程度か」と帰ってしまいます。

 帰ってきた瓢水は、その話を聞くと短冊に一首の俳句をしたためて使いの者に標記の句を禅僧に渡してくれと。これを見た禅僧はあわてて引き返し自らの未熟さを恥じ、教えを請うたそうです。

 海女は海に潜り水に濡れてしまう。しかし時雨は身体を冷やします。せめて浜までは身体を冷やすまいと蓑を着てわが身を思いやるという海女たちの姿を詠ったものです。

 つまり「どうせ最終的に濡れる(死ぬ)運命でも、その時までは自分の身体や命を大切にし、今できる最善を尽くして生きるべきだ」という人生訓を、海女の姿を通して静かに語った句です。当時の職リハの所長がふるさと九州に帰ると聞き、ふと、この句を思い出しました。